》は、へい先《せん》の旦那がお達者の時分から、御新造様がお小遣の内を少しずつ貸付けになさったので」
奉「フム、然《しか》らば半右衛門の妻《さい》柳が、出入の経師職幸兵衛を正直な手堅い者と見込んだゆえ、其の方の宅において貸付金の世話をいたさせたのじゃな、左様《そう》であろう、何うじゃ」
茂「左様《さよう》でございます」
奉「由其の方は女の事ゆえ覚えて居《お》るであろう、柳が初めて産をいたしたのは何年の何月で、男子であったか、女子であったか、間違えんように能く勘考して申せ」
由「はい」
と両手の指を折って頻りに年を数えながら、茂二作と何か囁《さゝ》やきまして、
由「申上げます……あれは今年から二十九年前で、慥か御新造が十九の時で、四月の二十日《はつか》に奥州へ行くと云って暇乞《いとまごい》にまいりました人に、旦那様が塩釜様《しおがまさま》のお符《ふだ》をお頼みなさったので、私《わたくし》は初めて御新造様が懐妊《みもち》におなりなさったのを知ったのでございます、御誕生は正月十一日お蔵開きの日で、お坊さんでございますから、目出たいと申して御祝儀《ごしゅうぎ》を戴いたのを覚えて居りま
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