て、半右衛門は其の時何歳であった」
 茂「左様で」
 と考えて、お由とさゝやき、指を折り、
 茂「三十二三歳であったと存じます」
 奉「当月九日の夜《よ》、柳島押上堤において長二郎のために殺害《せつがい》された幸兵衛という者は、如何なる身分職業で、龜甲屋方に入夫にまいるまで、何方《いずかた》に住居いたして居った者じゃ」
 茂「幸兵衛は坂本二丁目の経師屋《きょうじや》桃山甘六《もゝやまかんろく》の弟子で、其の家が代替りになりました時、暇《いとま》を取って、それから私方《わたくしかた》に居りました」
 奉「其の方宅に何個年《なんがねん》居ったか」
 茂「左様でございます、彼是十年たらず居りました」
 奉「フム大分《だいぶん》久しく居ったな」
 茂「へい、随分厄介ものでございました」
 奉「其の方の宅において幸兵衛は常に何をいたして居った」
 茂「へい、只ぶら/\、いえ、アノ経師をいたして居りました」
 奉「フム、由其の方は存じて居ろうが、龜甲屋の元の宅は根岸であったによって、坂本の経師職桃山が出入ゆえ、幸兵衛が屡々《しば/\》仕事にまいったであろう」
 由「はい」
 と云いにかゝるを茂二作
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