て置いた衣裳を着けて出ました、容貌は一段に引立って美しゅうございまして、殿様が早くとのお詞《ことば》に随い、島路は憶する色なく立上りまして、珠取《たまとり》の段を踊りますを、殿様は能くも御覧にならず、何か頻《しき》りに御思案の様子でございましたが、踊の半頃《なかごろ》で、
和「感服いたした、最《も》うよい、疲れたであろう、休息いたせ」
と踊を差止め、酒肴《さけさかな》を下げさせ、奥方を始め女中達を遠ざけられて、俄に腹心の吟味与力|吉田駒二郎《よしだこまじろう》と申す者をお召になりまして、夜《よ》の更けるまで御密談をなされたのは、全く長二郎の一件に就いて、幸兵衛夫婦の素性を取調べる手懸りを御相談になったので、略《ほゞ》探索の方も定まりましたと見え、駒二郎は御前を退《しりぞ》いて帰宅いたし、直に其の頃探偵|捕者《とりもの》の名人と呼ばれた金太郎《きんたろう》繁藏《しげぞう》という二人の御用聞を呼寄せて、御用の旨を申含めました。
三十二
町奉行筒井和泉守様は、長二郎ほどの名人を失うは惜《おし》いから、救う道があるなら助命させたいと思召す許《ばか》りではございません、
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