ん》申しておかなければ、殿様が自分を他《ほか》の女中達のように思召して、万一父助七へ御意のあった時は、否《いな》やを申上げることも出来ぬと思いましたから、羞かしいのを堪《こら》えまして、少し顔を上げ、
 島「だん/\の御意は誠に有難う存じますが、何卒《どうぞ》此の儀は御沙汰止《ごさたやみ》にお願い申上げます、長二郎は伎倆《うでまえ》と申し心立と申し、男として不足の廉《かど》は一つもございませんが、私《わたくし》家は町人ながらも系図正しき家筋でございますれば、身分違いの職人の家へ嫁入りを致しましては、第一先祖へ済みませず、且《かつ》世間で私の不身持から余儀なく縁組を致したのであろうなぞと、風聞をいたされますのが心苦しゅうございますれば、何卒《なにとぞ》此の儀は此の場ぎり御沙汰止にお願い申上げます」
 ときっぱり申述べました。追々世の中が開《ひら》けて、華族様と平民と縁組を致すようになった当今のお子様方は、この島路の口上をお聞きなすっては、開けない奴だ、町人と職人と何程《どれほど》の違《ちがい》がある、頑固にも程があると仰しゃいましょうが、其の頃は身分という事がやかましくなって居りまして、
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