楽《たのし》みにいたしますに就《つい》ては、女房があっては思うまゝに金銭を人に施すことが出来まいと申して、独身で居ります程の者で、職人には珍らしい心掛で、其の気性の潔白なのには親共も感心いたして居ります」
 和「フム、それでは普通の職人が動《やゝ》ともすると喧嘩口論をいたして、互に疵をつけたりするような粗暴な人物じゃないの」
 島「左様でございます、あゝいう心掛では無益な喧嘩口論などは決して致しますまいと存じます、殊に御酒は一滴も戴きませんと申す事でございますゆえ、過《あやま》ちなどは無いことゝ存じますが、只今申上げました通り潔白な気性でございますゆえ、他《ひと》から恥辱でも受けました節は、その恥辱を雪《すゝ》ぐまでは、一命を捨てゝも飽くまで意地を張るという性根の確《しっ》かりいたした者かとも存じます」
 和「ムヽ左様《そう》じゃ、其方《そち》の目は高い……長二郎は左様いう男だろうが、同人の親達は何ういう者か其方は知らんか」
 島「一向に存じません」
 和「そんなら誰か長二郎の素性や其の親達の身の上を存じて居《お》る者はないか、其方は知らんか」
 と根強く長二郎のことを穿鑿《せんさく》
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