島路と改め、お腰元になりましたが、奥方《おくがた》附でございますから、殿様にはまだお言葉を戴いた事がありません、今日のお召は何事かと心配しながら奥方の後《うしろ》へ坐って、丁寧に一礼をいたしますを、殿様が御覧遊ばして、
和「それが島路か、これへ出て酌をせい」
との御意でありますから、島路は恐る/\横の方へ進みましてお酌を致しますと、殿様は島路の顔を見詰めて、盃の方がおるすになりましたから、手が傾いて酒が翻《こぼ》れますのを、島路が振袖の袂で受けて、畳へ一滴もこぼしません、殿様はこれに心付かれて、残りの酒を一口に飲みほして、盃を奥方へさゝれましたから、島路は一礼をして元の席へ引退《ひきさが》ろうと致しますのを、
和「島路待て」
と呼留められましたので、並居る女中達は心の中《うち》で、さては御前様は島路に思召があるなと互に袖を引合って、羨ましく思って居ります、島路はお酒のこぼれたのを自分の粗相とでも思召して、お咎めなさるのではあるまいかと両手を突いたまゝ、其処《そこ》に居ずくまっておりますと、殿様は此方《こっち》へ膝を向けられました。
三十
和「ちょっと考え事
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