では、復讐《かたきうち》の外は人を殺せば大抵死罪と決って居りますから、何分長二を助命いたす工夫がございませんので、筒井侯も思案に屈し、お居間に閉籠《とじこも》って居られますを、奥方が御心配なされて、
 奥「日々《にち/\》の御繁務《ごはんむ》さぞお気疲れ遊ばしましょう、御欝散《ごうっさん》のため御酒でも召上り、先頃召抱えました島路《しまじ》と申す腰元は踊が上手とのことでございますから、お慰みに御所望《ごしょもう》遊ばしては如何《いかゞ》でございます」
 和泉「ムヽ、その島路と申すは出入町人助七の娘じゃな」
 奥「左様にございます」
 和「そんなら踊の所望は兎も角も、これへ呼んで酌を執《と》らせい」
 と御意《ぎょい》がございましたから、時を移さずお酒宴の支度が整いまして、殿様附と奥方《おくさま》附のお小姓お腰元奥女中が七八人ずらりッと列《なら》びまして、雪洞《ぼんぼり》の灯《あかり》が眩《まぶ》しいほどつきました。此の所へ文金《ぶんきん》の高髷《たかまげ》に紫の矢筈絣《やはずがすり》の振袖で出てまいりましたのは、浅草蔵前の坂倉屋助七の娘お島で、当お邸《やしき》へ奉公に上《あが》り、名を
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