を握りつめて、白洲の隅まで響くような鋭き声で、
 長[#「長」は底本では「奉」と誤記]「御奉行《ごぶぎょう》様へ申上げます」
 と云って奉行の顔を見上げました。

        二十八

 さて長二郎が言葉を更《あらた》めて奉行に向いましたので、恒太郎を始め家主源八其の他《た》の人々は、何事を云出すか、お奉行のお慈悲で助命になるものを今さら余計なことを云っては困る、而《し》て見ると愈々本当の気違であるかと一方《ひとかた》ならず心配をして居りますと、長二は奉行の顔を見上げまして、
 長「私《わたくし》は固《もと》より重い御処刑《おしおき》になるのを覚悟で、お訴え申しましたので、又此の儘生延びては天道様《てんとうさま》へ済みません、現在親を殺して気違だと云われるを幸いに、助かろうなぞという了簡は毛頭ございません、親殺しの私ですから、何卒《どうぞ》御法通りお処刑《しおき》をお願い申します」
 奉「フム……然《しか》らば幸兵衛夫婦を其の方は親と申すのか」
 長「左様でございます」
 奉「何ういう仔細で幸兵衛夫婦を親と申すのじゃ、其の仔細を申せ」
 長「此の事ばかりは親の恥になりますから申さず
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