う、奉行は狂気じゃと思うが何うじゃ」
 一同「お鑑定《めがね》の通りと存じます」
 とお受けをいたしました。仔細を知りませんから、長二が人を殺したのは全く一時発狂をいたした事と思うたのでございましょうが、奉行は予《かね》て邸《やしき》へ出入をする蔵前の坂倉屋の主人から、長二の身持の善《よ》き事と伎倆《うでまえ》の非凡なることを聞いても居り、且《かつ》長二が最初に親の恥になるから仔細は云えぬと申した口上に意味がありそうに思われますから悪意があって、殺したので無いということは推察いたし、何卒《どうか》此の名人を殺したく無いとの考えで取調べると、仔細を白状しませんから、これを幸いに狂人にして命を助けたいと、語《ことば》を其の方へ向けて調べるのを、怜悧《りこう》な恒太郎が呑込んで、気違に相違ないと合槌《あいづち》を打つに、引込まれるとは知らず萬助までが長二を悪くする積りで、正気の沙汰でないと申しますから、奉行は心の内で窃《ひそ》かに喜んで、一同に念を押して、愈々《いよ/\》狂人の取扱いにしようと致しますと、長二は案外に立腹をいたしまして、両眼《りょうがん》に血を濺《そゝ》ぎ、額に青筋を現わし拳
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