ざいまして[#「ございまして」は底本では「ございましで」と誤記]、幼少の時から親孝心で実直で、道楽ということは怪我にもいたしませんで、余計な金があると正直な貧乏人に施すくらいで、仕事にかけては江戸一番という評判を取って居りますから、金銭に不自由をするような男ではござりませんから、悪心があってした事では無いと存じます」
 源「申上げます、只今恒太郎から申上げました通り、長二郎は六年ほど私《わたくし》店内《たなうち》に住居いたしましたが只の一度夜|宅《うち》を明けたことの無い、実体《じってい》な辛抱人で、店賃は毎月十日前に納めて、時々釣は宜《い》いから一杯飲めなぞと申しまして、心立《こゝろだて》の優しい慈悲深い性《たち》で、人なぞ殺すような男ではござりません」
 萬「へい申上げます、私《わたくし》主人方で昨年の夏から長二に払いました手間料は、二百両足らずに相成ります、此の帳面を御覧を願います」
 と差出す帳面を同心が取次いで、目安方が読上げます。
 奉「この帳面は幸兵衛の自筆か」
 萬「へい左様でございます、此の通り格別贔屓にいたしまして、主人の妻《さい》は長二郎に女房の世話を致したいと申
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