が間違いで、先刻《せんこく》三吉《これ》に、親方に願いたい事があるから宅《うち》に御座るか聞いて来いと申付けたのを間違えて、親方に来てくださるように申したとの事でございます」
 長「ムヽ左様《そう》いう事ですか、訳さえ分れば宜《い》いじゃアありませんか、それより御用の方をお聞き申しましょう」
 助「そんならお話し申しますが、実は私《わたくし》先年から心掛けて、先祖の位牌を入れて置く仏壇を拵えようと思って、三宅島の桑板の良いのを五十枚ほど購《もと》めましたが、此の仏壇は子孫の代までも永く伝わる物でもあり、又火事に焼けてならんものですから、非常の時は持って逃げる積りです、混雑の中では取落す事もあり、又他から物が打付《ぶッつか》る事もありますゆえ、余ほど丈夫でなければなりませんが、丈夫一式で木口《きぐち》が橋板のように馬鹿に厚くっては、第一重くもあり、お飾り申した処が見にくゝって勿体ないから、一寸《ちょっと》見た処は通例の仏壇のようで、大抵な事では毀《こわ》れませんように、極《ごく》丈夫に拵えたいという無理な注文でもございますし、それに位牌を入れる物ですから、成るべくは根性の卑しい粗忽《そこ
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