此の書付を渡したからにゃア此家《こっち》に何《ど》んな事があっても己《おら》ア知らねえよ、また己の体に何様《どん》な間違えがあっても御迷惑アかけねえから、御安心なせいやし」
 と立上って帰り支度を致しますが、余りの事に一同は呆れて、只互いに顔を見合すばかりで何にも申しませんから、お政が心配をして、長二の袂を引留めまして、
 政「長さんお待ちよ……まアお待ちというのに、お前それでは済まないよ、よもやお忘れではあるまい、廿年前の事を、私は其の時十三か四であったが、お前がお母《っか》に手を引かれて宅《うち》へ来た時に、私のお母《っか》さんがマア十《とお》や十一で奉公に出るのは余《あんま》り早いじゃアないかと云ったら、お前何とお云いだ、お母《ふくろ》がとる年で、賃仕事をして私を育てるのに骨が折れるから、早く奉公をして仕事を覚え、手間を取ってお母に楽をさせたいとお云いだッたろう、お母さんがそれを聞いて、涙をこぼして、親孝行な子だ、そういう事なら何《ど》の様にも世話をしようと云って、自分の子のように可愛がったのはお忘れじゃアなかろう、また其の時お前の名は二助と云ったが、伊助という職人がいて、度々《
前へ 次へ
全165ページ中102ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング