ますな。近「なに彼《あ》りやア此方《こつち》の人が映《うつ》るんだ、向うに大きな姿見《すがたみ》が立つてゐるのさ。梅「此方《こつち》の人が向うへ……(前後《ぜんご》を見返《みかへ》り)え成程《なるほど》近江屋《あふみや》さん貴方《あなた》が向うに立つてゐますな、成程《なるほど》能《よ》く似《に》てゐますこと。近「似《に》てゐる筈《はず》よ、鏡《かゞみ》へ映《うつ》るんだから、並んで見えるだらう。梅「私《わたし》は何方《どれ》で。近「何方《どれ》だツて二人並んで居《ゐ》るだらう。梅「へえ……。首を動かし見て、「成程《なるほど》此方《こつち》で首を振《ふ》るやうに向うでも振《ふ》り、舌《した》を出せば彼方《あつち》でも出しますな。近「止《よ》しねえ、見《みつ》ともねえから。梅「ムヽウ私《わたし》は随分《ずゐぶん》好《い》い男《をとこ》ですな。近「ウン……。梅「私《わたし》は此《こ》の位《くらゐ》な器量《きりやう》を持《も》つてゐながら、家内《かない》は鎧橋《よろひばし》で味噌漉《みそこし》を提《さ》げて往《い》つた下婢《をんな》より悪いとは、ちよいと欝《ふさ》ぎますなア。近「其様《そん》な
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