だてえが何うしたんだか訳が分らねえ、物を人に呉れるなら名でも明して呉れるが宜《い》いんだ、何うしてお筆さんが泥坊などをする様な娘《こ》でない事は誰でも知ってる、夫《それ》に此様《こん》な事になるというのは私《わし》には些《ちっ》とも訳が分らねえ、お上は盲目《めくら》だ。というと又一人が、
△「其様《そん》な事を云うなよ/\」
と近所では色々噂をして居る。吉原帰りは田町の蛤《はまぐり》へ行って一盃《いっぱい》やろうと皆其の家《うち》へ参ります。
×「もう是で飯を喰おう」
△「もう一本やろう」
×「余《あんま》り遅《おそく》なるから、丁場《ちょうば》の仕事がよ」
△「丁場へは兼《かね》が先に行ってるからもう一本やろう」
×「兄いは酔っちまってる、グッと思切って続けてやんなもう充分酔ってるから飯を喰おうじゃアねえか」
△「宜《い》いからもう一本|交際《つきあ》いねえな、汝《てめえ》が二猪口《ふたちょこ》ばかりアイをすれば、残余《あと》は皆《みんな》己が飲んで仕舞わア…長い浮世に短い命だ…人は…篦棒めえ正直にしたってしなくたって同じ事だ京橋鍛冶町の小間物屋のお筆さんの事を見ても
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