を置いたばかりで斯《こ》う云う事に成ったんだが、決してお筆さんに其様《そん》な理由《わけ》はない不正金だというが」
孫「イエ金子《かね》などが宅《うち》に有る気遣いは有りません、何う云う災難ですか、大屋さんお筆を返して下さいませんと私《わたくし》は小便に行《ゆ》く事もお飯《まんま》を喰う事も出来ません、お願いでございますから」
とワイ/\泣《ない》て居ったのは然《さ》もあるべき事でございます。
八[#「八」は底本では「七」と誤記]
扨《さて》お筆を段々調べて見ますと、親父が大病で商売も出来ず、衣類道具も売尽《うりつく》して仕様のない所から、毎晩柳番屋の蔭へ袖乞に出て居りますると、これ/\斯《こ》う云うお武士《さむらい》が可哀想だと仰しゃって紙に包んで下さいましたのを、お鳥目《あし》かと存じて宅《たく》へ帰り開けて見ると金子《きんす》でございました、親に御飯を喰べさせる事も出来ん様な難渋な中ゆえ、遂《つい》大屋さんに黙って使いました段は誠に恐入りますという所が、口不調法ではございますが、曲淵甲斐守様が一目見れば孝心な者で有るか無いかはお分りにも成りましょう、殊に
前へ
次へ
全134ページ中97ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング