《なん》とも云えん味《あじわ》いのものだ、飲む気が有るなら遣ろうか」
喜「是は何うも、何《なん》ですかえ…夫《それ》は有難うございます…此盃《これ》へ何卒《どうぞ》…是は何うも頂く物は、えへゝゝ大きな物へ」
武「余り大きな物へ入れちゃア困る、徳利が小さいから、これへ入れてやろう」
風呂敷を解いて小さい徳利を取出《とりいだ》して、栓《くち》の堅いのを抜きまして、首を横にしてタラ/\/\と彼是《かれこ》れ茶椀に半分程入れて、
武「実は私《わし》も親類共へ些《ちっ》と遣り度《た》いと思って提《さ》げて来たのだが、馳走に成って何も礼に遣る物がないから」
喜「有難う存じます、おゝお梅、行って来たか」
梅「あゝ行って来たよ」
喜「今な、禁裏さまや公方様が喰《くら》って、丁寧な事《こた》ア云えねえが、御三家御三卿が喰《くら》う酒で番太郎風情が戴ける物じゃねえんだが、殿様が遣ると仰しゃって戴いた」
梅「夫《それ》はまア有難い事で、何もございませんが、召上るか召上らないか存じませんが、只今鰌の抜《ぬき》を云い付けて参りましたから」
武「何も構って呉れちゃア困る」
喜「宜《い》いから彼
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