是は何うも皆《みんな》酒家《さけのみ》の喰う物ばかりで」
 梅「何かお肴を」
 喜「鰻でも然《そ》う云って来ねえよ」
 梅「上《あが》るかえ」
 喜「上っても上らなくっても宜《い》い、鰌《どじょう》の抜きを、大急ぎで然う云って来や、冷飯草履を穿《は》いて往《い》け殿様|彼《あれ》は年は二十三ですが、器量が好《よ》うございましょう、幾ら器量が好くたって了簡が悪くっちゃア仕様が無《ね》えが、良い了簡で私《わっち》を可愛がりますよ」
 武「是は恐入った、馳走に成るからお前のうけ[#「うけ」に傍点]も聞かなければならんが、貴様は酒が嗜きだと云う処から初めて私《わし》が来て馳走に成り放《ばな》しでは済まんから、少し譲り難い物を遣《や》ろうか、是は容易に得難い酩酒で有る、何《いず》れで出来るか其処《そこ》は聞かんが、是は何か京都の大内から将軍家へ参って、将軍家から御三家御三卿方へ下されに成って、たしない[#「たしない」に傍点]事で有るから其の又家来共に少しずつ之を頂戴致させるんだが、何うも利き目が違って、其の酒の中へぽっちり、たらりと落して、一合の中へ猪口《ちょく》に四半分もポタリと落してやると何
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