袢に新しい襟を掛けたぜ、好《い》いもんじゃア有りやせんが銘仙か何《なん》かの着物が出来ておつな帯を締《しめ》ましたよ、宜《い》い装《なり》をすると結髪《むすびがみ》で働いて居る時よりゃア又|好《よ》く見えるね、内々《ない/\》魚などを買って喰う様子でげすぜ、此の間も魚屋が来たら何が有る、鱈……それじゃア鱈をお呉れって鱈を買いやしたが病人に鱈は宜うごぜえますのかね」
 姐「そんな事を気にしなくっても宜いが何うも様子が訝《おか》しい」
 勘「私《わっち》も娘《ねえ》さんの顔が見てえから時々|行《ゆ》くんです」
 此の勘次が毎日の様に来ては手伝いますから気の毒だと思って居ます処へ又来て、
 勘「お筆さん水を汲んで上げやしょう」
 筆「おや勘次さん毎度有難う」
 勘「なにどうせ幾度も汲みに行《ゆ》くんで、宅《うち》の姐さんは清潔家《きれいずき》でもって瓶《かめ》の水を日に三度|宛《ずつ》も替えねえと孑孑《ぼうふら》が湧くなんてえ位で、小便にでも行くと肱《ひじ》の処から水をかけて手を洗うてえ大変なものでえへゝゝどうせ序《ついで》でげすから遠慮するにア及びやせんよ」
 筆「誠に毎度有難う」
 勘「
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