か」
 勘「然《そ》うでげすね、此の頃は大変様子が宜《い》いから、ね、お父さんなどは何うも少し顔色が違えやして、此の頃じゃアにこ/\して居やす、私《わっち》にも此の間手拭を呉れたね」
 姐「手拭を貰ったと、何《な》んで貰ったんだい」
 勘「何んだって度々水を汲んでやったり何《なん》かするんで大きに色々お世話に成るって呉れましたが余《あんま》り好《い》い心持だから匂いを嗅いだが、些《ち》っとも好い香気《におい》はしませんね、矢張《やっぱり》手拭の臭いがした」
 姐「あの娘《こ》なんぞに何か貰いなさんなよ、何《なん》でも旦那が附いたに違《ちげ》えねえノ」
 勘「えゝ、何《な》んだか知りませんが、其の旦那てえのが些《ちっ》とも来るのを見た事がねえ、何でも夜中《よなか》に来るんでげしょうよ何処《どこ》かへ参詣《おまいり》に行《ゆ》くって時々出え/\したが、何処か知れない処で逢ってお金を貰って来るんでげしょう、あの親父が此の間|髭《ひげ》を剃りましたよ白髪交りの胡麻塩頭を結《ゆっ》て新しい半纏を引掛《ひっかけ》て坐って居ますが大きに様子が快《よ》くなって病人らしく無く成ったが、娘《ねえ》さんも襦
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