て》へ出ない様に多分にお金を下すった事か、あゝー……私の為には神さま……」
と手を合せて伏拝み何所《どこ》の人だか知りませんから心の中《うち》で頻《しき》りと礼を云い、翌日《あした》に成りますると先《ま》ず此金《これ》でお米を買うんだと云う、其のお米を買うたって一時《いちじ》に沢山《たんと》買って知れては悪いと思いましたから、狐鼠《こっそ》り少し買い、一朱もお金を出せば薪も買えれば炭も買える、又金を一つ処へ仕舞って置いて知れると悪いと思いましたから、彼方此方《あっちこっち》へお金を片附けて仕舞って置きまして、些《ちっ》とずつ出して使い、
筆「お父《とっ》さまはお寒かろうから暖《あった》かい夜具を着せたい」
と夜見店《よみせ》へ参りまして古着屋から小僧さんに麻風呂敷に掻巻《かいまき》に三布蒲団《みのぶとん》を背負《せお》い込ませ、長家の者に知れない様にお父さんに半纏を着せたいと云うので段々と狐鼠《こそ》/\買物をして参りますが、世間じゃア直《すぐ》に目が着きます、或る時例の姐子《あねご》が、
姐「おい勘次や」
勘「えゝ」
姐「奥のお筆さんは良《い》い旦那でも附いたのじゃアねえ
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