の八日|御作事奉行《おさくじぶぎょう》より転じて依田豊前守と御交代になり明和《めいわ》の六年八月十五日までお勤めに成ったという。大岡越前守、依田豊前守、曲淵甲斐守、根岸肥前守《ねぎしひぜんのかみ》などいうは何《いず》れも御名奉行と云われた方で、申し続きましたお筆のお捌《さばき》は依田|豊州《ほうしゅう》公から曲淵甲州公へ御引続《おんひきつぎ》になりました一件で、錯雑《こみいり》ましてお聴悪《きゝにく》い事でございましょう左様御承知を願います、扨《さて》お筆は数寄屋河岸の柳番屋の蔭へ一夜《ひとよ》置き位に出て袖乞を致しまするも唯養父を助けたい一心で、恥しいのも寒いのも打忘れて極月《ごくげつ》ヒュー/\風の吹きまするのをも厭《いと》わず深更《しんこう》になる迄往来|中《なか》に佇《たゝず》んで居て、人の袖に縋《すが》るというは誠に気の毒な事で、人も善い時には善い事|許《ばか》り有りますが、間が悪くなると引続いて悪い事許り来るものでお筆などは至って親孝行にして為人《ひとゝなり》も善し屋敷育ちでは有り、行儀作法も心得て居《お》るから誰に会っても誉《ほ》められる様な誠に柔和な娘で有りますけれ共、
前へ
次へ
全134ページ中84ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング