此の武家にお筆が頼み入る処、是が又一つの災難に相成るのお話。

        七[#「七」は底本では「六」と誤記]

 えゝ引続きまする依田政談も、久しゅう大火に就《つ》いて筆記を休んで居りましたが、跡も切目《きれめ》になりましたから一席弁じます事で、昨日《さくじつ》火事見舞ながら講釈師の放牛舎桃林《ほうぎゅうしゃとうりん》子《し》の宅へ参りました処|同子《どうし》の宅は焼残《やけのこ》りまして誠に僥倖《しあわせ》だと云って悦んで居りましたが、桃林の家《うち》に町奉行の調べの本が有りまして、講釈師|丈《だけ》に能く調べが届いて居る、本が有るから貸して遣ろうと云うので、私《わたくし》は借りて参りまして段々調べて読んで見ますると、依田豐前守は、依田和泉守といい町奉行の時分は僅《わずか》な間でございます、延享《えんきょう》元年の六月十一日|御目附《おめつけ》から致して町奉行役を仰付けられ宝暦《ほうれき》三年の三月廿八日にはもう西丸《にしまる》の御槍奉行《おやりぶぎょう》に転じました事でございます。して見ると調べの間は長い事ではございません、其の次は曲淵甲斐守という是も名奉行で、宝暦三年四月
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