な》の鬮《くじ》が当ったから皆《みんな》お遣りよ何を愚図/\して居るのだ」
 一人の男が不承/″\に出すを受取って、
 甲「さア此の人のだ二朱と二百上げるよ」
 筆「有難う存じます/\」
 男「何うしても二朱と二百の方が礼が多い、だがね、姉さん此の男のは小花が当って余計ものですが、私のはたった六十四文でも割返しだから、丁度二十両の内に這入って居る者だから私の方は親切が深い」
 乙「そう自分|許《ばか》りいゝ子になりたがらなくってもいゝぜ」
 と銭を恵んで呉れましたのは天の助けで、それから又翌晩も出て是が三日四日続くと、もう幾らか様子を覚えましたから通り掛った人の袖にすがりましてお願いでございますというと、其の人は恟りして、
 男「何《なん》だい、恟りさせやがる」
 筆「親父が永々の病気で、難渋致しますから何卒《どうぞ》お恵みを……」
 男「アヽ、美《よ》い女だ美い娘《こ》だねえ、五百やるから材木の蔭へ這入らないか」
 などという悪い奴が中には有ります、お筆は驚いて御免遊ばせと云って逃出しましたが、段々寒くなるに従って人通りがなくなり、十二月の月に這入ってヒュウ/\と云う風が烈しいから夜
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