れて仕舞い、
 筆「貴方お願いでございます」
 ○「アヽ、何《なん》だい突然《だしぬけ》に恟《びっく》りした、どうも此処等《こゝら》へは獺《かわうそ》が出るから……」
 筆「永々親父が煩いまして難渋致します、何卒《どうぞ》親子の者を助けると思召して御憐愍《ごれんみん》を願います」
 ○「然《そ》んなら早く然《そ》う云えば宜《よ》いのに吉田さん/\、袖乞だ一寸御覧」
 と小田原提灯の火影《ほかげ》で見ると
 「中々|美《い》い女だ繻絆を着ないで薄い袷《あわせ》見た様な物を着て何《ど》うも気の毒な事だの」
 △「成程是は美い素敵だ姉《ねえ》さん親父《おとっ》さんは余程悪いかえ」
 筆「はい永い間病気で」
 ○「困るだろうねえ無尽《むじん》を取って来たから……取って来たって割返しだよ、当れば沢山《たんと》上げるが只《たっ》た六十四文ほきゃアないが是をお前に私《わし》が志しで」
 筆「有難う存じます」
 と金を貰ってしくしく泣《ない》て居りました、此の為体《ていたらく》を見て一座の男が、
 甲「アヽ、泣くよ本当に嬉しいのだ、真に喜んで泣くよ偽乞食《にせこじき》でないから、お遣りお前は小花《こば
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