が宜《い》い上に、一寸気が利いて、親孝行で、あんな好《い》い娘はありませんぜ」
 女「可哀想にあの位の器量をもって…」
 勘「ありゃア姐さん、親父《おとっ》さんが死んで仕舞うと却って助かりますぜ」
 女「そんな事を云いなさんなよ」
 勘「あの親父《おやじ》は堅いから喧《やかま》しいが親父が死んで仕舞えば旦那でも何《なん》でも取れます、あれで軟かい着物でも着せてお化粧《しまい》をさせて置いて御覧なせえ、そりゃア素敵なもんだ、親父はもう、直《じき》に死にますぜ」
 女「馬鹿な事をお云いでない、只《たっ》た一人のお父《とっ》さんが逝去《なくな》った日には本当に可哀そうだ」
 勘「なに死ねば宜《い》いや、兎も角も美《い》い嬢《こ》ですねえ」
 女「真実《まこと》に宜いのう、愛らしいこと、人※[#「※」は「てへん+丙」、534−9]《ひとがら》で恰《まる》でお屋敷さんのお嬢さん見たようで、実に女でも惚れ/″\するのう」
 勘「姐さんでも惚れますかえ」
 女「お前水を汲んでやんなよ」
 勘「汲んでやる処じゃアない、お筆さんが井戸端へ行くと跡から飛んで行って汲んでやるので、此間《こないだ》も佐吉《さ
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