汲んでやります」
 女「焼豆腐を煮てやりたいと思うが、勘次、お前出来るかえ」
 勘「えゝ出来ますとも私《わっち》が煮て上げましょう」
 女「お前に煮られる者か」
 勘「煮られなくって、七輪を此処《こゝ》へ持って来やしょう」
 女「そうだねえ、まア火を煽《おこ》してお呉れ……消炭《けしずみ》を下へ入れて堅い炭を上へ入れるのだよ、あら、鍋が空じゃアないか、湯を入れて掛けるのだアね、旨くやんねえよ」
 勘「宜《よ》うげす…それ七輪の火が煽って来た…徐々《そろ/\》湯が沸立《にた》って来たぞ御覧《ごろう》じろ今に旨く煮てやるから一寸《ちょっと》お塩梅《あんばい》をしよう」
 女「おい、お前が何も塩梅しなくっても宜《い》い、然《そ》うバタ/\七輪の下を煽《あお》がないでも宜いよ、お前のは他見《わきみ》ばかりして居るから、上の方で灰ばかり立って火が煽《おこ》りゃアしない」
 勘「なに、大丈夫だ今旨く煮て見せやす、ねえ姐さん/\」
 女「何《なん》だい」
 勘「裏のお筆さん位|美《い》い女は沢山《たんと》はありませんねえ」
 女「あゝ美い嬢《こ》だねえ、人柄がいゝねえ」
 勘「女が美《よ》くって人柄
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