京橋の鍛冶町《かじちょう》へ二間間口の家を借り、娘に小間物を商なわせ、小商《こあきない》を致して居ります中《うち》に、余り心配を致したのが原因《もと》に成って孫右衞門は病の床に就《つ》きました、娘のお筆は大切に看病を致して居りますが、誠に不幸な人でございまして、死ぬ処を助けられて宜《よ》い処へ行ったと思うと其の家が零落を致し養母には間も無く死別《しにわか》れ、親父は病気に成って其の看病を致しますが、一体孝心の娘でございますから、店で商いを致しながら父の看病を怠《おこたり》なく致しまする故か、孫右衞門の病気も怠った様でございますが、頓と身体が利きません、先ず中気の様に成りました、仕方がないから家主|藤兵衞《とうべえ》へ相談の上、店を仕舞って裏屋住いに成り、お筆が僅の内職を致しますが居立《いたち》の悪い親を介抱致しながらでございますから、内職を致す間《ま》も碌々ございません、親父が寝付いた間《ま》に内職を致すのだから何程の工銭《こうせん》も取れません、売り喰いに致して居りましたが、末には、何うも致方がない、読者《あなたがた》は御存じがありますまいが、貧乏人の身にある事で米薪が切れる、着物が
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