を確《しっか》りして此の挨拶をしてお呉れ、私の家内にも一旦相談して見なければならないがお前さんはまアどう云う心持だえ」
 筆「誠にもう何《なん》とも申訳はございません、貴方のお家《うち》へも済みませんが、此方様《こなたさま》でも命をお助け下さったのみならず種々《しゅ/″\》御心配を掛け、殊には私と同じ様なお嬢|様《さん》も入水を成さって相果て、此方《こちら》の御両親のお心持をお察し申しますと誠にお気の毒様で、どうも是程に不束《ふつゝか》な私を、あゝ仰しゃって下さりますものを無にも致されませんから、それに大恩のあるお両人《ふたり》様でございますから親父の帰る迄|此方様《こちらさま》の御厄介に成って私も居ります積りでござりますから左様思召して下されまし、何《いず》れ其の中《うち》御家内様へお目に掛ってお詫を致しますから、どうか貴方から宜しゅう仰しゃって下さいまし」
 と涙を拭きながら申しますから
 金「どうも然《そ》う云う訳ですかなア、じゃア、まアお暇《いとま》致しましょう」
 と金兵衞もお筆が申すので仕様がないから、ブツ/\云いながら立帰りました。是が縁で此のお筆が此の家《いえ》の娘にな
前へ 次へ
全134ページ中68ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング