然《そ》う参りませんなア」
孫「左様ではござりましょうが、ねえお筆さん私が折入ってお願だがどうかね、是も何かの約束と思ってまア、私の娘に成って下さいなね、夫婦とも子のない身の上でどうか願いたいが、のう婆さん」
妻「どうかねえ貴方が御得心で親御の行方が分る迄も此方《こちら》へ居て貰うよう願い度《た》いものでね」
と夫婦が種々《いろ/\》に折入って頼みますが、金兵衞は其の実はお筆を連れて帰り、自分の甥の嫁に致したい心底ですから困りまして、
金「でもございましょうが何《なん》でございます、其の事に付いて種々訳のある事で、私も一通りならん心配を致しましたから一旦連れて帰って家内に面会させまして其の後《のち》の事に致しましょう」
孫「夫は至極御尤の事でございます、が何《ど》うかまア御無理だが是非願い度い、せめて親御のお帰り迄お預け置き下さい、此の子も御縁あって私の処へお出でに成ったのですから親父さんがお帰りになりましてから其の時お帰し申しても又御承知の上で此方《こちら》へ更《あらた》めて戴くと云う様な事に致し度いもので、どうかなア其処《そこ》は貴方が御承知を願い度いものでございます」
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