け下さいました趣《おもむ》きで有難う存じます、それに亦《また》お宅の嬢様も御逝去《おなく》なりと承りましたが嘸《さぞ》御愁傷で、七日《なぬか》の朝築地の波除杭《なみよけぐい》の処へ土左衛門が揚ったと云うので、私《わたし》も思わずお筆の死骸と存じまして跣足《はだし》で箸と茶碗を持って駈出す様な事で、行って見ると小紋の紋附に紫繻子の帯を締めまして赤い切《きれ》を頭へ掛けて居りまして、お筆ではないかと存じましたが、それが此方のお嬢様の御死骸と只今承る様な事で」
孫「成程それは/\誠にどうも」
金「えゝ其のお筆が居りますなれば私《わたくし》が逢い度《た》いもので、是へ何卒《なにとぞ》お呼びなすって」
孫「誠に間が悪がって、貴方にお目には掛れないと云って居ります」
家「なに然《そ》んな事は有りません、これお筆さんや何《なん》でお前どうも困るじゃアないか」
孫「まア其様《そんな》に大きな声をなすっては却っていけません、これ婆ア此処《こゝ》へ連れてお出で/\」
妻「さア此処へお出で」
と孫右衞門の妻に連れられてお筆は面目なげに泣きながら出て参りまして、顔も上げ得ませんで泣伏して居ります
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