もないから頭を剃って廻国《かいこく》するという置手紙を残して居なくなって仕舞い、諸道具も置形見にして行きましたと云って家主様《おおやさん》も大変心配して居た処へ、此方《こちら》から知らせたので夫婦共に大喜びで、どうも有難い、決してお出でには及びません、私《わたくし》の方から引取に出でます、今晩遅くとも上《あが》りますという事でございます」
孫「それは/\親切の家主《いえぬし》さんだ」
筆「えゝ夫《そ》れではお父様《とっさま》は剃髪して廻国にでもお出《いで》になりましたか」
と泣倒れます。
孫「それだから早くお前さんが然《そ》う云えば宜《い》いのに、今になって然《そ》んな事を云っても仕方がない、家主が引取に来ると云うから、御酒《ごしゅ》の一盞《ひとつ》も上げなければならないから其の支度をして置きなさい、肴も何か好《よ》い物を取って置くが宜《よ》い…、なに然う泣いて居てはいけない、お父様《とっさん》が頭を剃って廻国をすると云って行方知れずになり、お母様《っかさん》も親類もなくお前さん一人に成って、他に兄弟衆もなく心細くもあろうから、私の処へ居て、是も何《なん》ぞの因縁と思って家《う
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