け申す事が出来ず、其の中《うち》私《わたくし》の方でも愁傷の中《なか》で取紛れて、存じながらお訪ね申さなかったが、段々とお尋ね申した末に、漸くお名前も知れたから早速お知らせ申すが、御無事でお在《いで》だから御心配をなさるな、明日《みょうにち》此方《こちら》からお娘子を連れて参るから前以てお知らせ申すと早く行って来な、あゝ申しお家主の名は何《なん》と申しますえ」
 筆「はい金兵衞さんと申します」
 孫「町役人《ちょうやくにん》は金兵衞|様《さん》というのだよ、大急ぎでなア」
 時「へえー」
 奉公人は駈出して参りましたが暫らく経って夜《よ》に入《い》って帰って参りました。
 時「へえ只今行って参りました」
 孫「あゝ御苦労だった、分ったかえ」
 時「へえ解りました」
 孫「親御|様《さん》も嘸《さぞ》案じて居たろう」
 時「それが其の親御がお娘子を捜しに出たきり行方が知れませんというので」
 妻「此の姉さんのお父《とっ》さんが」
 時「へえ、家主《おおや》さんが大変に案じてお在《い》でゞ、其のお父さんが、只《たっ》た一人の娘を失《なく》し今まで知れないのは全く死んだに違いない、最早楽しみ
前へ 次へ
全134ページ中59ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング