此処《こゝ》へお出で、泣かなくっても宜《よ》い、実に私が泣きたい位だ、少し察しておくれ」
筆「はい嘸段々お淋《さむ》しゅうございましょう」
孫「いやもう只《たっ》た一人の娘を失《なく》してまるきり暗夜《やみ》になったようで、お前さんを見ると思い出します、然《しか》しまア私の娘の方は事が分って、斯《こ》うやって二七日《ふたなぬか》も済ましたが、遂々《つい/\》娘の事ばかり思って居て、お前|様《さん》の事を聞くのも段々延びたが、何うかお前さんの身の上を打明けて呉れないと困る、ねえ二十日も三十日も人の娘を只預かってお前様の親御に申訳ない、只駈出した訳でない、何《いず》れ仔細あって出た事であろうから親御の心配と云う者は一方ならん事で、お前が明らさまに云って呉れないと何うも困るねえ」
筆「はい」
孫「何卒《どうぞ》云って下さい、ねえ私も斯《こ》うやって愁傷の中だから心配を掛けて下さるな」
妻「本当に旦那の云う通り、して若い中《うち》から余り丈夫でないから今年五十四になって、殊におとみが彼《あ》アいう訳になってから、なお/\ヨボ/\して来てねえ、然《そ》うしてお前のお父《とっ》さんの処へ
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