く娘の死骸でございますから、直に検視を願って漸く家《うち》へ引取って、野辺の送りを致すやら実に転覆《ひっくりかえ》るような騒ぎ、それで段々|延々《のび/\》になって彼《か》の娘の事をきく間《ま》もないほどの実に一通りならん愁傷で、先《まず》初七日《しょなぬか》の寺詣りも済みましたが、娘は駈出そうと思っても人が附いて居るから、又駈出して愁傷の処を騒がせて厄介を掛けては気の毒と思ったから、奥の狭い処へ這入って只|此処《こゝ》の親達の心を察しは[#「察しは」は「察しては」の誤記か]泣き、自分の親も嘸《さぞ》案じて居るだろうと心配しては泣き、見るにつけ聞くにつけても涙ばかり、漸く二七日《にしちにち》も済みましたから、
 孫「どうも大きに御苦労だった、今度は変死の事だから寺詣りも何も派手には行《ゆ》かず、碌々他に何も致さんが、何《いず》れ仏の為には功徳をする積りだ……あのなに何《なん》とか云った、あの娘《こ》の名よ」
 妻「まだ申しませんよ」
 孫「困るのう、何とか云って呉れゝば宜《い》いに、何うしても云わんかえ、是へ呼んでおくれ、婆さんお前に昨夜《ゆうべ》云った事を得心するだろうか、まア姉さん
前へ 次へ
全134ページ中56ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング