れ時藏《ときぞう》[#「時藏《ときぞう》」は底本では「由藏《よしぞう》」と誤記]は帰ったか何うも知れないか」
 時「へえ、王子《あちら》の方でも、何うも彼方《あちら》へ入《いら》っしゃいませんそうで彼方でもお驚きで、何《いず》れ此方《こちら》からお訪ね申すという事で」
 孫「夫は困ったなア、あの瀧二郎《たきじろう》は帰って来たか」
 瀧「へえ、只今帰りました」
 孫「何をマゴ/\して居るのだ早く此方《こっち》へ来て知らせて呉れないでは困るなア、何うだのう、知れないか」
 瀧「へえ、伊皿子台《いさらこだい》の方へもお出でがないって、何うもお驚きで誠に飛んだ事でお仕合せな事でと斯《こ》う申しました」
 孫「何がお仕合せだ、何《なん》だか解らん口上ばかり云って……まアも一度本気になって迷児《まいご》を尋ねに出て貰いたい」
 瀧「迷児どころではない、もう十八になった娘でございますから迷親《まいおや》で」
 孫「誰だ、そんな悪口《わるくち》をいうのは」
 御主人は立腹致す、大騒ぎで、是から八方へ手を分けて尋ねまする中《うち》に、築地の方へ流れて来た死骸は是々だというから直《すぐ》に行って見ると全
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