前|住所《ところ》は申し上げられません、どうぞお慈悲と思召してお見逃しなすって下さい」
妻「まア然《そ》んな事を云わずに何うか其の訳を聞かせて下さい、私も娘の行方が知れなくなって、それがまア実は家《うち》に居た手代の金次郎《きんじろう》という者と、まア誠にお恥かしい事だけれども悪い事をして、親にも申し訳がないというので死ぬ気になったと見え、二人共家を出で昨日《きのう》まで行方が知れません、処が金次郎の死骸だけは分って鉄砲洲《てっぽうず》で引揚げましたから金次郎の親の家が芝《しば》の田町《たまち》で有りますから旦那と私と行って是々と話すと先方《むこう》でも一方《ひとかた》ならん歎《なげき》ではありましたが、まだ私の娘の死骸が分りませんので諸方へ手分《てわけ》をして捜している内、何処其処《どこそこ》へ斯《こ》ういう死骸が流れて来たなどゝ人の噂を聞き、船で彼方此方《あちらこちら》捜して永代の橋の処まで来ると、今飛込んだ娘があるというから、実は自分の娘と思って慌てゝ船頭に頼んで引揚げて貰った処が、お前さんまア歳頃といい私共の娘と同じ形《なり》の小紋の紋附帯も矢張《やっぱり》紫繻子|必定《てっ
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