参りました。
孫「これ何を呼びなよ、あの金太《きんた》をそうして表へ錠を下《おろ》すのだよ」
奉「へい夫《それ》でも駈出すといけませんから」
孫「駈出す気遣《きづかい》はない、大丈夫だよ、さア姉さん此処《こゝ》へお出で…あのおよしや御仏前へ線香を上げてなアもうお線香が立たない様だから、香炉の灰を灰振《はいふる》いで振《ふる》ってお呉れ…見れば誠にお人柄の容姿《みめ》形も賤しからん姉さんだがお屋敷さんか、どういう処にお在《い》でゞ、何ういう訳があって身を投げたか、それを聞かせて下さい、親御も嘸《さぞ》案じて居ましょう、能く考えて見なさい、両親を残してお前|様《さん》、先立って死ぬというのは無分別と申す者で、同胞《きょうだい》衆も御親類でも何《ど》んなに心配するか知れん、何ういう事があるかは知らんが、何《なん》の死なゝいでも宜《よ》い事と人に笑われる事の有るもの、歳の行《ゆ》かん内は分別なしで困るものさ、実にそれは後《あと》に残る御両親のお心根をお察し申します、其の歎《なげ》きは何《ど》の位だか知れませんよ」
筆「はい、何うも御親切に有難う存じますが是には種々深い訳がありまして、名
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