と思ったが全く死後《しにおく》れたに違いない、彌助《やすけ》お前|其処《そこ》を退《ど》きな、何か薬があったろう、水を吐かせなければならん」
と大騒ぎ、大勢寄って集《たか》って介抱したから、お筆は漸《やっ》と気が付いて見ると屋根船の中《うち》でございます、それに皆知らん人|許《ばか》りでござりました、見ると其の儘泣伏しますを見て共に涙を拭います客は、夫婦連れと見えて、
主「やア是はおとみじゃアない」
妻「おや/\私は着物や帯の模様が似て居たから必然《てっきり》おとみだと思ったら、着物の紋が違って居る」
主「おゝ然《そ》うだ、誠に何《ど》うも…まあ気が付いて宜かった、何しろ気の毒な事だ、もし姉《ねえ》さんお前何ういう訳だえ」
筆「はい、何うぞお見逃しなすって下さい」
主「見逃せたって何う見殺しになるものか、船の港板端《みよしばた》へ、どぶんと音を聞いたから船頭に引揚げて貰って介抱した処が気が付いたので安心致しましたが、もし姉さんまアお聞きよ、そりゃ能々《よく/\》の事だから身を投げたのであろうが、見逃すという訳には往《い》かん、まア私の家《うち》は浅草の福井町《ふくいちょう》
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