間と申し上げましたが、何はやお上を軽蔑いたすような申し分で重々恐れ入ります、だが何《ど》のように仰せられ肉がたゞれ骨を砕かれても決して申し上げられません、毛頭覚えはございません」
と更に恐るゝ気色《けしき》なきに御奉行も言い様がない。主名は明されん、武士道が立たんというに、
豐「吟味中|入牢《じゅろう》申し付ける」
と此の下河原清左衞門が入牢を申し付けられたのは実に災難な事で、なれども斯ういう柔和の人が或《あるい》は毒を盛ったか解りません、是から何《いず》れも念に念を入れ、吟味与力も骨を折って調べたがいっかな云わん、誠に薄命の事で。是からお話が二つに分れまして、又娘のお筆は、どうも身に覚えのない濡衣《ぬれぎぬ》で袂《たもと》から巾着が出て板の間の悪名《あくみょう》を付けられたからは、お父《とっ》さんが物堅いから言訳を申しても立たない、誰《たれ》にも顔を合されないから寧《いっ》その事一と思いに死のうというので、湯屋の裏口から駈出して小日向に参りましたのは、祖父《じゞ》祖母《ばゞ》の葬ってある寺は小日向|台町《だいまち》の清巌寺《せいがんじ》で有りますから参詣を致し、夫《それ》から又
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