でございます、どのような強い責《せめ》に遭いましても覚えない事は白状いたされません、はい如何にも残念な事で、御推察下され」
とどうも言葉の様子に曇りもなく、毒を盛るような侍ではないなと云う事がお目に触れたから、
豊「然《しか》れば其の方は前々《ぜん/\》は何処《いずく》の藩中である、主名《しゅめい》を申せ」
清「主名は申されません、主家《しゅか》の恥辱《はじ》に相成る事、どのようなお尋ねがあっても主人の名前は申されません、仮令《たとい》身体が砕けましょうとも、骨が折れましても主名を明かしましては武士道が立たんから決して申し上げられません」
豐「其の方|出生《しゅっしょう》は何処《いずく》だ」
清「天地の間でございます」
豐「黙れ、其の方奉行を嘲弄《ちょうろう》いたすな」
清「いえ/\、何《ど》ういたして、天下のお役人様、殊に御名奉行と承り承知致して居ります、甚《はなはだ》恐れ多い事で、決して嘲弄は致しませんが、主名を申すと主《しゅう》の恥辱《はじ》に相成るから申し上げられんと云うので、又々生れ処をお問がありましても是を申し上げればおのずから主名を明すような事で、故に天地の
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