裁断がありまして、先《ま》ず重罪なるものは罪を軽《かろ》くいたすようなお情深いお奉行で余程お調べに仁恵《じんけい》がありました事でございます、其の中でも吉田監物《よしだけんもつ》の家の事に付いて豊前守様から曲淵甲斐守《まがりぶちかいのかみ》様へお引継になり、両奉行の誉《ほまれ》になったというお話でございます。宝暦の三年下河原清左衞門という浪人者が築地小田原町に裏家住いを致して居る中《うち》に、家主《いえぬし》金兵衞が、娘の孝心から誠に気の毒だというので、目を掛けましたから大きに親子の者も貧苦を免《まぬか》れ幸《さいわい》を得て喜んで居る甲斐もなく、翌年宝暦四年正月の六日年越しの晩に娘の行方が知れなくなったので、父の下河原清左衞門が娘を探しに吉原に懇意に致す婦人が遊女になって居ると云う話だから、相談をしようと云うので、事によったら娘が懇意に致した婦人があるから、其の遊女の所へ尋ねて往《ゆ》きはしないかと、吉原へ参って格子先を覗いて歩くと、辨天屋|祐三郎《ゆうざぶろう》という江戸町一丁目の大籬《おおまがき》の次位|大町《だいまち》小見世《こみせ》というべき店で、此の家《や》の紅梅という女が
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