ゝ旦那/\」
 清「はい」
 喜「華魁《おいらん》が貴方にお目に掛りたいと仰しゃいますんで」
 清「左様でございますか、何処《どれ》へ出ます」
 喜「何うか籬《まがき》の方へお出《いで》を願います」
 其の内華魁が上草履《うわぞうり》を穿《は》いて跡尻《あとじり》から廻って参りますのを見て。
 清「お前さんかえ、すっかり忘れてしまった、極《ごく》年の行かん時分に会ったのだから」
 娼妓はいきなり清左衞門の胸倉を固く捕《と》り、声を振立て、
 娼「此の武家《さむらい》だよ、私の亭主に毒を飲まして殺した奴は」
 清「何をする………」
 其の中《うち》に若者《わかいもの》が多勢《おおぜい》にて清左衞門を取押えて大門《おおもん》の番所へ引く事に成りました。是れから直《すぐ》に町奉行所へ出て、依田豊前守のお調べに成りましたが、此の下河原《しもがわら》清左衞門は人違いか、全く彼《か》の毒を盛った武家《さむらい》か、是れは後篇に申し上げることにいたします。

        三

 えゝ引続きの依田政談で依田豊前守御勤役中には少しお六《むず》ケしい事があると吟味与力に任して置かず直々《じき/\》の御
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