ものか、己の店子に間違いが有っちゃア此の儘に捨置かれねえ、何処《どこ》までも詮議を為《し》なけりゃアならねえ、他《ほか》の事とは違う、婆アは何処に居る、姉さんは何処に居る」
 番「お虎婆アは先刻《さっき》帰りましたが、何《なん》でも是は姉さんに恨《うらみ》が有って仕た事でしょう、姉さんは間が悪いとでも思ったか、裏口から駈け出した限《き》り行方が知れません」
 金「夫《それ》は大変だ」
 と汗をダク/\かいて宅《たく》へ帰って参り、
 金「おい/\何故お前《めえ》お筆さんと一緒に湯に行《い》かねえんだ」
 蓮「だって尾張町の夫婦が子供を連れて来て漸《ようや》く帰して仕舞うと又|彌兵衞《やへえ》さんが来たのだもの」
 金「今本郷町の桂庵婆アがお筆さんに泥棒をしたって悪名《あくみょう》を附けやアがった」
 蓮「お前さん黙って居たかえ」
 金「己は跡から行ったのだから様子が分らねえ」
 蓮「お前さん何《なん》の為に行ったんだねえ」
 金「知らずに行ったのよ、板の間だと云う騒ぎなんだがお前さえ附いて行《ゆ》けば其んな事ア有りアしねえんだ」
 蓮「私は宅《うち》の片付け物をして居らアねお前さんこそ
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