り、本郷町の桂庵《けいあん》のお虎と云うもので、
虎「ちょいと姉《ねえ》さん、待ってお呉れよ……おい姉さん」
筆「はい」
虎「お前ね、今|此処《こゝ》に居る人は一人か二人しか居ないよ、小紋の紋付に紫繻子の帯を締めて良《い》い処《とこ》のお嬢さんのふりをして、大胆な女じゃアないか人の金入《かねいれ》を取りやアがって、あの巾着にゃア金は沢山《たんと》入ってやアしないよ、三両一歩入ってるの、此方《こっち》へ返えせ、此の前《めえ》も此方ア銘仙の半纒が失《なくな》ってらア、疾《と》うから眼を注《つ》けて居たんだ、近所で毎度顔を見て知ってるぞ、左の袂《たもと》に入ってるから出しなよ、何《なん》だ利いた風な阿魔女《あまっちょ》だ」
と口穢《くちぎた》なく罵《のゝし》るのを此方《こちら》は何を云われても只おど/\して居ると、お虎婆アは無闇に来てお筆の袂から巾着を引出して、
虎「それ見やアがれ此の通りだ、此の阿魔女め」
と小桶を取って投《ほう》り付けると小鬢《こびん》に中《あた》って血が出る。娘だけに他《はた》が大騒ぎで、
番「外へ立っちゃアいけません、板の間稼ぎでも何でもない物の間違でげ
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