て居ります。
筆「おやお帰り遊ばせ」
清「今日は風が吹くんで往来も繁くないから早く帰って来た」
筆「私がお迎いに出ようと思って居りました処で、大層にこ/\笑って在《いら》っしゃいますね」
清「お家主《いえぬし》さんが御親切に色々仰しゃって下さり、それにあのお内儀さんは綿を紡む内職が名人だそうで近所の娘達も稽古に来るからお前も遣《よこ》したら宜かろうと、色々と御親切に仰しゃって衣類まで貸して下さり、此の通り私《わし》に綿入羽織にしろと被仰《おっしゃ》ってこれを貸して下すった実に御親切な事で恐入った訳で、仇《あだ》に思っては成りませんぞ、実に仕合せな事で、何《ど》うか一生懸命に覚えて呉れるかね」
筆「お父様《とうさま》、私《わたくし》は一生懸命に神信心をして上手に成ってお父様のお手助けをいたし度《と》うございますから御心配なく、来年の夏迄には屹度《きっと》一人前に成りますから」
清「然《そ》う早くも覚えられまいが其の心得で居れば宜《よ》い」
と直《すぐ》に貰った着物を着せて礼に遣ると此方《こちら》は嫁に仕様と思うのでございますから、ちやほや致し是から綿紡みを教えまして出来ても
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