は可なりの処の娘《こ》ですから其ん中へ這入るのだからとお思いなさるのは御尤ですが、私の着物が明いてますから、碌なのじゃアありません私が若い時分に着たので、今は入りませんから上げちまっても宜《よ》いが、失礼ですからお貸し申します、其の内に手間が取れゝば又|拵《こしら》えて上げるように為《し》ますが、是は若い時分に締めた帯で、宅には娘はなし、親類にも女の児《こ》がないから取って置いても仕様が有りませんから」
 金「何か上げなよ、失礼だが半纒《はんてん》を、誠に失礼で御立腹か知らんが襦袢《じゅばん》なども上げなよ」
 蓮「どうぞ不用なのですから、赤いのも今は土器色《かわらけいろ》に成ったんです」
 金「細帯も附けて上げなよ」
 清「是は何《ど》うも恐れ入ります、残らず拝借致しても他の物と違いまして、瀬戸物や塗物は瑾《きず》を付けた位で済みますが、着類《きるい》は着れば切れるもので」
 金「宜しい切れても、仕舞って置いたって折切《おりき》れます、誰《たれ》にも遣る者はなし詰らんわけだから着せて下さい、綺麗な身装《なり》をして出入《ではい》りをして下されば私も鼻が高い、今だって汚くも何《なん》と
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