を残しまして一日留守に致し何かと御厄介勝で、夫《それ》にお隣の麹屋のお内儀《かみ》さんが誠に御真実になすって一通りならんお目をお懸け下され誠に有難い事でございます、お礼にも都度《つど》/\上《あが》り度《と》う存じますが何分貧乏暇なしで遂々《つい/\》御無沙汰勝に相成って済みません」
 金「其んな堅い事には及びません、裏の方の屋根が少し損じたから其の内に修繕《なお》させます、お前さんは能く毎日寒さ橋へお出《で》なさる、此の寒いのに名さえ寒さ橋てえんだから嘸《さ》ぞお寒かろう、ピュー/\風で、貴公《あなた》はお幾歳《いくつ》です」
 清「いえ何《ど》うも誠に多病の人間で、大きに病魔《やまい》の為《た》めに老けて見られますんですが、未だ四十六歳で」
 金「御壮《ごさか》んですな」
 浪「いえ甚《ひど》く弱むしに成りまして困ります、貴方《あなた》は何日《いつ》も御壮健ですな」
 金「マお茶をお喫《あが》んなさい」
 清「是は有難う存じます、頂戴致します、結構なお茶で、手前は茶が嗜《すき》で素《もと》より酒が嫌いだから、好《よ》い菓子も買えません、斯《か》くの如く困窮零落しては菓子も喫《た》べ
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