ねえ二人差向いに成ったら気を利かしてお外《はず》しなさいよ、私はお参りに行《ゆ》くよ、二人置いて行《ゆ》けば、冬なら炬燵《こたつ》が有るから当人同志で旨く成って仕舞い、当人が来たいと云えば宜いじゃアないか」
 金「夫じゃア無理無体にか、併《しか》しあの浪人は堅いから寄越すか知らん、おゝ噂をすれば影だ、ピー/\風でさむさ橋に出て居ても、見て貰い人《て》もないかしてもう帰って来た、帰り際に早いから屹度《きっと》寄るぜ」
 浪「えゝ御免を」
 金「はい」
 浪「留守中誠に有難う存じました、えゝ只今帰りました、清左衞門で」
 金「まア一寸お上《あが》んなさいよ」
 蓮「ちょいとお這入んなさい」
 浪「はい御免を、誠に何《ど》うも両|三日《さんにち》は引続いてお寒い事で、併しながら何日《いつ》も御壮健《おたっしゃ》な事で」
 金「其んな堅い事を云わないでも宜《よろ》しい、お茶を煎《い》れて羊羹《ようかん》でも切んなさい、なに無く成ったえ、何か切んなよ」
 蓮「切んなって切るものは無いよ」
 金「じゃア最中《もなか》でも出しなよ」
 浪「えゝ御内室《ごないしつ》様|私《わたくし》が出ますると娘一人
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