、米搗《こめつき》は越後と信濃からと極って居ました、江戸ッ子の番太郎は無い中に、長谷川町《はせがわちょう》の木戸の側《わき》に居た番太郎は江戸ッ子でございます、名を喜助《きすけ》と云って誠に酒喰《さけくら》いですが、妙な男で夜番《よばん》をする時には堅い男だから鐘が鳴ると直《すぐ》に拍子木を持って出ます、向うの突当《つきあたり》までちゃんと行って帰って来ます。大概の横着者は、チョン/\チョン/\と四つ打って町内を八分程行くと、音さえ聞えれば宜《い》いんで帰って来ますが此の男は突当りまで見廻って来ないと気が済まないと云う堅い人で、ボンチョン番太と綽名《あだな》が有る位で何《ど》う云う訳かと聞いて見ると、ボーンと云う鐘とチョンと打出す拍子木と同じだからボンチョン番太と云う、余程堅い男だが酒が嗜《す》きで暇《ま》さえあれば酒を飲みます、女房をお梅と云って年齢《とし》は二十三で、亭主とは年齢が違って若うございますが、亭主思いで能く生酔《なまえい》の看護《もり》を致しますので、近所の評判にあの内儀《かみ》さんは好《い》い女だ喜助の女房には不釣合だと云われる位ですが、誠に貞節な者で一体情の深い女で
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