出《やけだ》されが荷を担《かつ》いで逃げ様とする、向《むこう》からお町奉行が出馬に成る、此方《こっち》の曲角からお使番が馬で来る、彼方《あちら》から弥次馬が来る、馬だらけに成りますが、只今は道路の幅が広くなりずーッと見通せますが、以前は見通しの附かんように通路《とおりみち》が迂曲《うねっ》て居りましたもので、スワと云うと木戸を打ち路次を締める、少しやかましい事が有ると六《む》ツ限《ぎり》で締切ります、此の木戸の脇に番太郎がございまして、町内には自身番が有り、それへ皆町内から町内の家主《いえぬし》(差配人さん)がお勤めに成って、自身番の後《うしろ》の処が屹度《きっと》番太郎に成って居たもので、番太郎は拍子木を打って夜廻りを致す丈《だけ》の事でスワ狼藉者だと云っても間に合う事はない、慄《ふる》えて逃げて仕舞い、拍子木を溝《どぶ》の中へ放り出して番屋へ這込《はいこ》むなどと云う弱い事で、冬になると焼芋や夏は心太《ところてん》を売りますが、其の他《た》草履草鞋を能《よ》く売ったもので、番太郎は皆金持で、番太郎は越前から出る者が多かったようで、それに湯屋の三助は能登国《のとのくに》から出て来ます
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